一般社団法人スカイステージのこの記事では、修繕積立金が足りないときに値上げ幅を決める前の4つの手順を整理しています。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金が計画に対して不足している管理組合は36.6%です。値上げ幅は不足額を残り年数で割るのではなく、建物の現状を確認してから長期修繕計画を引き直して逆算します。
| 手順 | 確認すること |
|---|---|
| ① 積立額の目安比較 | ㎡単価が国土交通省ガイドラインの幅に入っているか |
| ② 計画の最終見直し日 | 長期修繕計画が5年程度以内に見直されているか |
| ③ 建物の現状調査 | 想定より劣化が進んでいるか、遅れていないか |
| ④ 計画の引き直し | いつ・どこまで・いくらの3点で値上げ幅を決める |
この記事でわかること:積立金不足の全国統計、ガイドラインの目安額、長期修繕計画の見直し頻度、建物調査の位置づけ、値上げ幅の決め方
01 修繕積立金の不足は例外ですか?
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金が計画に対して不足している管理組合は36.6%で、前回調査から1.8ポイント増加しています。3棟に1棟以上で不足が発生しており、計画どおり積み立ててきた管理組合でも資材費と人件費の上昇で足りなくなる事例があります。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 修繕積立金が計画に対して不足している管理組合 | 36.6%(前回調査から1.8ポイント増) | 国土交通省 令和5年度マンション総合調査(報道発表) |
| 長期修繕計画に基づいて積立金を設定しているマンション | 59.8% | 同上 |
原因は積立不足そのものだけではありません。近年は資材費と人件費の上昇により、同じ工事内容でも見積額が計画時より大きく上がっています。「計画どおりに積み立ててきたのに足りない」という状況が起きるのはこのためです。一般社団法人スカイステージは、ドローンと赤外線カメラによる外壁調査を通じて、修繕計画の前提となる建物の状態を数値で可視化しています。
02 現在の積立額はガイドラインの目安とどう比べますか?
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)は、専有床面積あたりの月額目安を建物規模別に示しています。20階未満・延床5,000㎡未満の平均値は335円/㎡・月、事例の3分の2が収まる幅は235〜430円/㎡・月です。現在の月額積立金を専有床面積で割った㎡単価が幅の下限を下回る場合、不足はほぼ確実です。
| 建物の規模 | 平均値 | 事例の3分の2が収まる幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・延床5,000㎡未満 | 335円/㎡・月 | 235〜430円/㎡・月 |
| 20階未満・延床5,000〜10,000㎡ | 252円/㎡・月 | 170〜320円/㎡・月 |
| 20階未満・延床10,000〜20,000㎡ | 271円/㎡・月 | 200〜330円/㎡・月 |
| 20階未満・延床20,000㎡以上 | 255円/㎡・月 | 190〜325円/㎡・月 |
| 20階以上 | 338円/㎡・月 | 240〜410円/㎡・月 |
機械式駐車場がある場合は、1台あたり月額の修繕工事費を加算します。2段式は6,450円、3段式(ピット1段)は5,840円、3段式(ピット2段)は7,210円、4段式は6,235円、エレベーター式・垂直循環式は4,645円です。
| 機械式駐車場の型式 | 1台あたり月額 |
|---|---|
| 2段式 | 6,450円 |
| 3段式(ピット1段) | 5,840円 |
| 3段式(ピット2段) | 7,210円 |
| 4段式 | 6,235円 |
| エレベーター式・垂直循環式 | 4,645円 |
確認方法は、現在の月額積立金 ÷ 専有床面積(㎡)で㎡単価を出し、上表の幅に入っているかを見ることです。幅の下限を下回っている場合、不足はほぼ確実です。
03 長期修繕計画の最終見直し日はなぜ確認が必要ですか?
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)は、長期修繕計画を5年程度ごとに見直すことを前提としています。計画期間は新築マンションで30年以上、かつ大規模修繕工事が2回以上含まれる期間が標準です。最終見直しから5年以上経過した計画の工事金額は、現在の市況を反映していません。
この状態で不足額を計算しても、根拠のない数字になります。値上げ幅を決める前に、長期修繕計画の最終見直し日を確認してください。根拠は長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)です。
04 値上げ前に建物の現状を調査で数値化する意味はありますか?
長期修繕計画に書かれているのは「12〜15年後に外壁塗装」といった時期の想定であり、実際の劣化状況ではありません。想定より劣化が進んでいれば工事範囲を広げ、想定ほど進んでいなければ工事時期を後ろにずらせます。値上げ幅は、建物の現状を数値化してから決めるほうが適正になります。

国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)の修繕周期の目安は、外壁塗装(雨掛かり部分)の塗替、シーリング打替、タイル張補修がいずれも12〜15年です。屋上防水は補修・修繕が12〜15年、撤去・新設が24〜30年です。タイル張補修20年、屋上防水20年、昇降機17年は改定前に広く使われた数字であり、令和6年ガイドラインの目安とは一致しません。
| 部位 | 修繕周期の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装(雨掛かり部分)の塗替 | 12〜15年 |
| シーリング打替 | 12〜15年 |
| タイル張補修 | 12〜15年 |
| 屋上防水の補修・修繕 | 12〜15年 |
| 屋上防水の撤去・新設 | 24〜30年 |
修繕周期はあくまで標準値です。海沿い・幹線道路沿い・日当たりの条件で劣化速度は変わります。実際の状態を確認すると、次のような判断ができます。
- 想定より進行している → 工事範囲を広げる必要があり、値上げ幅を大きく取る
- 想定ほど進行していない → 工事時期を後ろにずらし、値上げ幅を抑える
- 一部だけ悪い → 部分補修を先行し、全面工事を先送りする
ドローンと赤外線カメラを使えば、足場やゴンドラを組まずに外壁全面を撮影し、タイルの浮きや内部の水分を可視化できます。国土交通省は、定期報告制度における外壁のタイル等の調査において、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する赤外線調査(無人航空機による方法を含む)を認めています。無人航空機による赤外線調査は、令和4年1月の平成20年国土交通省告示第282号改正で明確化されました。
建築基準法第12条に基づく定期報告では、平成20年国土交通省告示第282号により、竣工または外壁改修から10年を超え、かつ過去10年以内に全面打診等を行っていない場合、3年以内に外壁の全面打診等が必要とされています。報告の頻度や対象となる建物の範囲は、所在する特定行政庁(自治体)の指定により異なります。
一般社団法人スカイステージの実例では、ドローン赤外線外壁調査の費用は60万円〜89.6万円です。15階建2棟・約250世帯のマンションでは税込781,000円でした。調査費用は数十万円ですが、判断を誤ったときの工事費の差は数百万円から数千万円になります。
- 調査の費用と内訳 → ドローン赤外線外壁調査の費用はいくら?実例3件と内訳を公開
- 大規模修繕前に使う理由 → 一級建築士が勧めるドローン赤外線外壁調査!大規模修繕前に使うメリットとは。
- 工事開始後の追加費用 → 大規模修繕の適正費用って?工事開始後の追加費用は発生するの?
05 調査結果をもとに計画を引き直して値上げ幅はどう決めますか?
建物の現状が数値化されると、各工事をいつやるべきか、工事範囲はどこまでか、その結果いくら必要かの3つが同時に決まります。この順番で組み立てた値上げ案は、根拠を示して説明できます。理事会や区分所有者への説明で最も反発が出るのは、なぜその金額なのか分からないときです。
- 各工事をいつやるべきか
- 工事範囲はどこまでか
- その結果、いくら必要か
調査報告書という第三者の資料があると、合意形成の時間が短くなります。建物管理全体の判断基準は「マンションオーナーの建物管理ガイド」にまとめています。
監修:一般社団法人スカイステージ 建物診断チーム(一級建築士・赤外線診断士・二等無人航空機操縦士在籍)
06 修繕積立金の不足でよく聞かれることは何ですか?
修繕積立金の不足についてよく聞かれるのは、不足している管理組合の割合、適正額の目安、長期修繕計画の見直し頻度、値上げ前の建物調査の意味、調査報告書の使い方の5点です。一般社団法人スカイステージの回答を以下にまとめます。
修繕積立金が不足している管理組合はどのくらいありますか?
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金が計画に対して不足している管理組合は36.6%で、前回調査から1.8ポイント増加しています。出典は国土交通省の報道発表です。
修繕積立金の適正額の目安はいくらですか?
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)では、地上20階未満・建築延床面積5,000㎡未満のマンションで平均335円/㎡・月、事例の3分の2が235〜430円/㎡・月の範囲に収まるとされています。20階以上では平均338円/㎡・月です。機械式駐車場がある場合は、2段式で1台あたり月額6,450円などを加算します。出典は修繕積立金ガイドラインです。
長期修繕計画はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)では、5年程度ごとに見直すことが前提とされています。計画期間は新築マンションで30年以上、かつ大規模修繕工事が2回以上含まれる期間が標準です。根拠は長期修繕計画作成ガイドラインです。
値上げする前に建物調査をする意味はありますか?
あります。一般社団法人スカイステージの調査では、長期修繕計画の想定より劣化が進んでいる建物と、想定ほど進んでいない建物の両方が見つかります。前者は工事範囲の拡大、後者は工事時期の先送りにつながり、いずれも値上げ幅の根拠になります。調査費用は60万円〜89.6万円ですが、工事判断の差は数百万円規模になります。
調査結果は理事会や区分所有者への説明に使えますか?
使えます。一般社団法人スカイステージは赤外線解析報告書を作成しており、劣化箇所を画像と数値で示した第三者資料として、修繕積立金の改定や大規模修繕の合意形成の場で活用されています。
07 建物の現状を確認したいときは、どこから始めますか?
一般社団法人スカイステージでは、建物の状態から修繕の必要性を無料で確認できる建物診断シミュレーションをご用意しています。調査のご相談は建物診断ページからお問い合わせください。建物診断チーム(一級建築士・赤外線診断士・二等無人航空機操縦士在籍)が対応します。
お電話でのお問い合わせ:06-6914-4298(平日 9:00〜17:00)
マンション・ビル等の赤外線調査・外壁調査・修繕見積のご依頼は専用フォームから(担当が優先対応します)。
